



今から40年以上前、1960年代の一般家庭の音楽リスナーは自宅でモノラル・レコード・プレイヤーで聴く人がほとんどであった。ステレオ・セットを所有できる家庭は極一部のブルジョアジーだったのだ。ましてやティーンネイジャーのビートルズ・ファンは高価なステレオ・セットなど到底手が届かず、彼等(彼女等)はほとんどすべての人がモノラル・レコード・プレイヤーでビートルズを聴いていた。
したがってレコードもMONO MIXが主流であり、ビートルズも「プリーズ・プリーズ・ミー」から「ホワイト・アルバム」までMONO MIXを重視してレコードを製作していた。MONO BOXはオリジナルのMONOマスターをリマスターしたものでMONO盤ならではの分厚く迫力ある音が楽しめる。
またSTEREOとは明らかにMIX違いのはっきりわかる曲が数多く存在し、MONO BOXではSTEREO BOXとは全く別のビートルズを聴くことができる。
真のビートルズ・ファンはSTEREO BOX 、MONO BOXを揃えたところでビートルズのすべてを知ることになるのだ。
かつて、ビートルズのプロデューサーであるジョージ・マーティンは、「モノラルで聴いてこそ、あなたは本当に『サージェント・ペパー』を聴いたことになる」と語ったことがある。なぜならば、プロデューサーがそしてビートルズが責任を持ってミックス・ダウンしたのはモノラル・ミックスだったのである。理由は単純に、当時はモノラルが主流で、ふつうの家庭にあるレコード・プレーヤーはモノラルだったからである。
ステレオは大部分がクラシックかジャズ愛好家向けのものだった。もちろん当時の最新ヒット・チャートが流れるラジオ放送もモノラルだった。だが、ビートルズのレコードがモノラルに重きを置かれたのはそれだけが理由ではない。マーティンとビートルズは一丸となった迫力のあるロックンロール・サウンドを求めており、それはモノラル・サウンドでのみ実現出来るものだったのである。
よりロックンロールなサウンドをマーティンは追求しており、そのパンチのあるサウンドはほかのシンガーやミュージシャンの曲との差別化に成功した。当時、ラジオを聴いていた方なら、そのサウンドの違いに圧倒されたり、違和感を感じたりしたと思う。とくに「ビートルズ初期」と言われるころのサウンドは何かほかではまね出来ない独特のサウンドをモノラル・レコードに収めることに成功している。
「当時のビートルズが聴いたサウンド」、さらには「当時のリスナーが聴いたサウンド」、そして「もっともビートルズの曲がかっこよく聴けるフォーマット」として、モノラル・ミックスはビートルズ・ファンから絶大な信頼を得ていたのだ。
さらに、細かくマニアックなところまで掘り下げると、レコードはプレスを重ねるごとに音が変わっており、そのため厳密にはファースト・プレスのみがオリジナル・サウンドとなるのかもしれない。しかし、今回のリマスター盤、「ビートルズがスタジオで聴いていた音」そのものを再現するべく作られたCDなのである。これは、「当時のビートルズが聴いたサウンド」ということにおいては、レコードのファースト・プレス盤を凌駕するほどのコレクションなのである。


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