
来日時を唯一知る初代ディレクターの高嶋氏は「邦題の魔術師」とも言われるほどの名タイトルの名づけ親。タイトル逸話からビートルズ来日秘話まで、ビートルズの大ファンでもある放送作家の倉本美津留氏にその辺り聞いていただきました!
高嶋弘之氏 1934年神戸市生まれ。1959年東京芝浦電気(株)レコード事業部(現:東芝EMI株式会社)入社洋楽ディレクターとしてスタート。1964年ビートルズの初代ディレクターとなり、来日時にも担当。その後、邦楽担当となり和製ポップスで数々のヒットを作る。1969年退社。 倉本美津留氏 1959年広島生まれ。 |
倉本 : よろしくお願いします。 高嶋 : よろしくお願いします。 倉本 : 日本で一番最初にビートルズの担当をされた高嶋さんに、どうしても詳しいお話を聞きたくてですね。「抱きしめたい」というタイトルをつけられたのが、高嶋さんなのですよね。 高嶋 : そうです。ビートルズはだいたい、僕でしょ。ほとんど。 倉本 : そうなんですよね。だからそれがね、すごいことなんですよ。僕たちみたいなビートルズファンにとっては。 高嶋 : ビートルズが入ってきたときに、サウンド的にも違ったし、これはもう、革新的な音楽だと思ったから、ありきたりなタイトルは、全然頭からなかった。それでずばり、「抱きしめたい」ですよ。ちょっと正しい訳ではないと言えばないですけど。 倉本 : あれって、直訳すれば「手をつなぎたい」っていうことですよね。手をつなぐ先をいったっていうことを、高嶋さんの決めた言葉で印象づけたのが、革命的だったと思うんですよ。 高嶋 : 流れ的にはね。新しい時代が来たという。 倉本 : そこをかなり意識されて選んだわけですよね。 高嶋 : そうですね。タイトルつけるのうまかったんですよ。 倉本 : いや、そう思いますよ(笑)。 高嶋 : いっぱい良いタイトルつけてますよ。 <高嶋流ネーミング術>倉本 : 「抱きしめたい」の裏は、「こいつ」ですよね。「こいつ」ってタイトルもすごい斬新ですよね。 高嶋 : そうね、いい加減だね(笑)。 倉本 : 「こいつ」っていう、ひらがな三文字がビートルズの写真の上に載っているんですよ。「抱きしめたい」と「こいつ」って。なんかいつまでも残るタイトルなんですよね。 高嶋 : 僕はこれでも外資系のレコード会社の社長をやってますから、全然できないとは言えないけど、外資系の社長にしてはできないんですよ。 倉本 : 英語が。 高嶋 : 歌詞がすぐには来ないから、日本にいる外国人に聞き取りをしてもらうんですよ。それが間違えていることもあるから一応読みますけど、僕はいちいち辞書を引いて訳つけないんですよ。歌詞を自分の知ってる単語で適当に訳すんですよ。それから歌を聴いて、自分でひらめいたところでメインのタイトルをつける。後で振り返ってみてね、一番最悪だったのは、「ノルウェーの森」ですよ。 倉本 : 「Norwegian Wood」ですよね。 高嶋 : あれ「ノルウェー製家具」ですよ。そんなもん知るかってことですよ。パッと聞いたら「ノルウェーの森」って、浮かんだんですよ。 倉本 : 僕は、それはすごく正しい作り方じゃないかなと思うんですよ。例えば、ジョンが詞を作るときもね、そんな細かいこと考えてないと思うんですよ。降りてきたものをなんとなく言葉に乗せて、生んじゃったっていう感じだから。 高嶋 : 仮に間違えていたとしても、僕のつけたタイトルでもって歌を聴けば、ひとつの自分の詞の世界が浮かぶはずなんですよ。僕はそのほうを重要視したんですよ。彼・彼女のイメージの世界を、僕が手助けできたらなと。それで、その歌がより良くなればいいなと思ったんですよ。 |
<ビートルズサウンドを聴いての第一印象>倉本 : 一番最初にビートルズのサウンドを聴かれたときの印象をお聞きしたいのですけど。 高嶋 : いやもう、それまでの音楽と全然違うっていう感じがしましたよね。 倉本 : それは、すごい違和感っていう……。 高嶋 : うん、違和感。だから確か、僕ね、突然変異という言葉を使ったと思うしね。それから、放送局の親しい人に持って歩いて、聞いてもらったりしたけど、誰も受け付けなかったよね。 倉本 : そのすごい違和感を持ったときに、これはヒットするのかどうなのかって、悩みませんでした? 高嶋 : いやいや、あのね。僕ね、ヒットするということをいつも考えたことないんですよ。自分が好きか嫌いかなんですよ。自分が気に入ったら、やっぱりこれをひとりでも多くの人に伝えたいとね。僕はすごく親切だから。 倉本 : 大切ですよね、そういう気持ちは。 高嶋 : すごく気に入ったら、これ好きになって欲しいなと思うんですよ。そうでしょ? あなた、おいしいもの食べたら、おお、いいところあるよって。 倉本 : 言いますよね。 高嶋 : いい映画見たら、俺なんかケツまで言っちゃうけど。 倉本 : (笑) 高嶋 : だから、僕はまったくの素人なんですよ。 倉本 : いや、素晴らしい発想ですよ、それは。 <ビートルズ来日!>
倉本 : ビートルズと直接会った時の印象はどうでしたか? 高嶋 : あのね、当時、東芝の専務の石坂君と加山雄三さん3人で(ヒルトンの部屋に)入っていって、3人がもう居たのか、後から出てきたのかは定かではないけども、加山さんがポール・マッカートニーと握手して、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターと握手して。その後、僕も握手して。 倉本 : ジョンはどうしてたんですか? 高嶋 : その時いなかったの。それでジョンが遅れて入ってきてね、後ろから加山さんをこう、ハグしたのよ。いかにもジョン・レノンっていう感じがした。やんちゃ坊主って感じね。ニカーッと笑いながら。 倉本 : 面白いですね〜。 高嶋 : もう、いっぺんに緊張した空気が、ブレイクしちゃったよね。 倉本 : 打ち解けますよね。加山さんとビートルズは、どんな話をされてたんですか? 高嶋 : いやー、覚えてないね全然。 倉本 : 加山さん英語使ってたんですよね。 高嶋 : そう。たいして喋ってなかったんじゃないかな。 倉本 : (笑) 高嶋 : 緊張したもんみんな。第一ね、石坂専務と加山さんと僕はね、ヒルトンまで行く時ね、3人何を喋ったか全く覚えてない。 倉本 : ビートルズとは一言二言やりとりしたんですか? 高嶋 : もちろん。 倉本 : この手で4人と触ったわけですね? 高嶋 : そうそう。 倉本 : 僕もちょっと触らせてもらっていいですか。 高嶋 : なにを言ってるんですか(笑)。 倉本 : うわ〜!ビートルズ4人共と握手した人と握手してます。ありがとうございます! 高嶋 : (笑)。だから、それはやっぱり非常にね、うわー!と思いますよ。写真でしか見てなかった人と会うわけだから。 |
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<キャピトル盤CD>
高嶋 :懐かしいね。これキャピトル盤でしょ? 倉本 : そうです。高嶋さんは輸入されてきて、一番最初にキャピトル盤を見ているわけですよね。 高嶋 : うん、やっぱり最初にインパクトあったのは、イギリスの盤ですよ。 倉本 : あ〜そうですか。 高嶋 : これ懐かしいし、かわいいよね。ジャケットもそうだけど、この前ウィーンに行ってきたんだけどね、飛行機の中で、ずーっと『サージェントペパーズ〜』聞いてたの。全然古くないの。 倉本 : 古くないですよ。 高嶋 : 素晴しい。ビートルズはね、最初僕が好きな曲は、シングルでヒットしたりするんだけど、LPのなかに入ってる曲はどんどんどんどん良くなっていきますよ。 倉本 : そうなんですよね。とんでもない良い曲入ってますよ。 高嶋 : これはジャケットもかわいいけどね、音楽そのものが素晴しいよ。 倉本 : それで、これね(『ヘルプ!』のCD)、映画のサントラ盤で、ビートルズの曲以外で映画で使われた音楽も入ってるんです。 高嶋 : そうだったか。 倉本 : 僕はこのアルバムを小学生の時に買いました。今回CDになるまで一度もCD化されていなくて。貴重なアイテムだったので、新しいビートルズファンにとっては「へー、こんなんあったんだー」っていうものになると思うんですよね。 高嶋 : ジョン・レノンっていうのは結局僕なんかもそうだけどね、やっぱり人を楽しませたいってのが一番にある。 倉本 : はいはい。人を驚かせたい。楽しませたい。 高嶋 : 驚かせたいっていうか、驚かすのも含めて楽しませる。だからね、僕よく言ってたの。レコード会社の企画ってのは、驚きだって。例えばあなたが曲がり角きて、ワッと脅かしたら、驚くよね最初は。 倉本 : はいはい。 高嶋 : 二度目は驚かないじゃない。 倉本 : そうですね。 高嶋 : そんな企画を作ってる人が多い。分かる? 倉本 : はいはい、分かりますよ。 高嶋 : 最初はワッと脅かしたんなら次は頭をヒュッヒュッてやるとか。それが企画なんですよ。絶えず裏をかいていく。ジョン・レノンって人はね、そういうのに満ち溢れてた人じゃないかと。 倉本 : いやぁ、そうですよ。ビートルズの音楽がそうですからね。 高嶋 : 絶えずね、相手を裏切りながら新しい物を提供していく。 倉本 : 「ビートルズ的」っていうのはそういうことなんじゃないかと思うんですよね。今日は高嶋さんがビートルズを担当するべくしてした人やということがよく分かりました。本当にビートルズ的な、革命を起こされてきた方だということが分かったんで、すごいよかったです。 高嶋 : だって僕はさぁ、英語は出来ないし譜面は読めないしでディレクターやってきたんだから。 倉本 : いやいや、それがいいんですって。既成概念に囚われないところが。 高嶋 : でもこれからのディレクターは絶対それでは駄目。譜面読めないと。 倉本 : そうですか? 高嶋 : 僕はキャラクターで許して貰えたけどね。これからは英語もバッチリ、譜面もバッチリでね、色んな事を勉強しないと。 倉本 : でもその上に、高嶋さんみたいなキャラクターが無いと、駄目ですよ。 高嶋 : だけどな〜、僕の時代で終わりですよ。 倉本 : いや終わらせたら駄目です。それはもう、そういう高嶋さん的なものが大切なんですよ。 高嶋 : いやいや。 倉本 : 高嶋さんはビートルズでした!今日はどうも、ありがとうございました。 |
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