HOME > Great Huntingスペシャルコンテンツ TOP > アーティストインタビューvol.5 9mm Parabellum Bullet

インタヴュー・文/高橋智樹
「ドラムに限って言えば、録り終わった直後は100点でしたけど、今聴くと50点ぐらい(笑)。70点ぐらいかな? もちろん“堂々と世間に出せない”とかいう意味合いではないんですが、時間があれば個人練習に入ったりしていて、昨日より上手くなってる自負が常にあるので」と、9mm Parabellum Bulletの壮絶なビートの立役者=かみじょう ちひろはサード・アルバム『Revolutionary』を振り返る。ヘヴィ・メタルばりのツーバス・ドラム・セットを駆使し、衝動と激情のカタマリのような爆裂ドラム・プレイを聴かせるかみじょうだが、その背後にある音楽哲学は至ってクールかつ現実主義的なものだ。
「特に日本人って、ロックに対してテクニックじゃなく精神論を求めたり、見映えとか考え方とかを重要視したりしてるような気がするんですけど、僕はそこが理系っていうか冷静で、ちゃんと技巧的なところを持ち合わせてないといけないと思ってるんですよ。精神面だけで物理面に勝とうとは思ってないんで。“歌がうまくなくても、情熱が入っていればいい”っていう考え方もわかるんですが、それだけじゃやっていけないと思うし、テクニックも楽曲の良さも両方持ち合わせてるのがいいと思ってるし、両方聴かせるバンドになりたいと思ってますね」。
『Revolutionary』には「これが人生初作曲」というかみじょう作曲による「3031」も収録されている。
「昔、6年ぐらいエレクトーンやってたんで、“作曲ぐらい俺もできるだろう”と。自分で自分の力を見てみたかったっていうのもあるんですけど、意外とやれるもんだなと思いました。まあ、9mmだと、滝が曲作るの好きだし、あいつが持ってくるリフとかおもしろいので、僕は“僕だけができること”をやりたかったりするタイプの人間だから(笑)、滝ができることを別に俺がやろうとは思わなかったんですね、いままでは。それはドラムに関してもありますね。80年代90年代とか、ずっと8ビートが多かったと思うので、9mmではそういうのはあんまりやってなかったりするし。ツーバスのドラムとかも、メタルのバンドとかではたくさんいますけど、俺らみたいな──歌謡曲みたいな曲にメタルっぽく入れたりするのはあんまりないし。そこに暴れてるやつがいたり、クールぶってるやつがいたりとか、いろんな要素が混ざってくると……初めてっぽいことをやれてるかな、と思うんです」。
そもそも他のメンバーに9mm結成を呼びかけたのはかみじょう当人。「BOφWYとかBUCK-TICKに始まって、ユニコーン、X JAPANっていう感じ」とコピーに明け暮れていた理系大学生ドラマーは、9mmという新たな場所を得てその類稀なる実力を発揮していくことになる。
「理系だったので、わりと真面目に勉学に勤しんでたんですけど……軽音サークルに入ってて、友人2人がそれぞれインディーズとメジャーで同時期にデビューしたので、“真面目にやれば、意外とデビューできるんだ! じゃあ真面目にやろう!”と(笑)。それまで、人生で本気になったことってあんまりなかったんで……嫌な野郎ですね(笑)。オンナのコを落とそうと思ったりとか(笑)、予備校に通ってた一年間で本気になって勉強して、偏差値が20から一応55までは上がったけど、さすがに3年分は取り戻せなかったとか……過去に数えるほどしかなかった本気の一回です(笑)。まあ、ノーベル賞とか獲りたかったんで、勉強もわりとがんばってきたほうだし、目指してたエンジニアの道も捨ててこっちに来たんで、ドラムは本気でがんばってます」。
菅原卓郎、滝善充、中村和彦という最強のメンバーを得て、今では日本武道館でワンマン・ライヴを敢行するまでのバンドに成長した9mm。かみじょうが当初描いていた9mmの音楽像と今の9mmのサウンドとは「違ってもいるんですけど、延長線上にはある」と語る。
「レコード会社と育成契約を結ぶ寸前ぐらいかもしれないですけど、4人で本気で腹を割って話し合ったんですよ、デパートの屋上で(笑)。その時に“何をやりたいか”をみんなで言い合って。そこでまとまった結果が“速い、暗い、日本語”みたいな。まあ、だいたい今の9mmですよね(笑)。僕のバックグラウンドがメロコアだったりロックだったりするんで、そこにも合致してると思うんですけど。僕、メタルって大っ嫌いだったんですよ(笑)。テクニカルな自分たちを見せびらかして自慢する材料、ぐらいにしか思ってなくて。でも、実際にツーバスとかやってみたらおもしろいんですよね。だから、今じゃ滝たちにもだいぶ“メタラー”って言われるんですけど(笑)。9mmにはかなりメタル要素入ってますけど、あの頃だったら“いや、この曲ダメだろう”とかNG出してますよ。でも、今じゃ好き好んでやってるから……おもしろいもんですね(笑)」。
とはいえ、その“速い、暗い、日本語”の三原則を圧倒的にポピュラリティーのあるロックにしたのは、やはり9mmならではのマジックだ。
「でも、予感はありましたよ。音楽市場を見た時に、わりと世の中がメタルじみてるな、っていうのがあって。ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインがオリコン上位に入ったりとか、〈LOUD PARK〉があれだけ持ち上げられたりとか……前は市民権を得てなかったメタルっていう音楽が、すごいぐいぐい来てたりとかして。そういう状況を見てたり、デビューのタイミングでいしわたり淳治さんがついてくれたりしたのもあって、“行ける!”っていう確信があったし、リーマンやめてこっちの世界に飛び込んだんで……俺、なかなか先見の明があるなと(笑)。面接官とかにしたら絶対いい人材を引き抜くんだろうなと思いますよ。自分が就活してた時は、面接30社ぐらい受けて全部落とされたんですけど(笑)」。
ヘヴィ・メタルやハードコア、パンクを切り口に語られる次元を超えて、堂々とした“9mm Parabellum Bulletのロック”を確立した『Revolutionary』。若いリスナーにとっては、今作を入り口にメタルやハードコア含めロックという音楽のおもしろさを知っていくことになるだろう。それだけの存在感を持ったアルバムだ。
「別に僕らが到達点じゃなくていいと思ってるんで。僕らを入り口にして、将来的にジャズに行ったりとか、クラシックとかフォーク・ソングとか何に流れてもいいんですけど、音楽を好きになってくれる入り口が僕らだったらうれしいことですね。このアルバムで、ロックのひとつの形は作れたと思います。でも、これが完全に正しいとか言うつもりはもちろんなく、むしろ否定してくれてもいいと思ってます。たまたま今はCD出せば何万人もの人が買ってくれますけど、シカトされるよりはむしろ拒絶してもらったほうが、拒絶した人たちが向かう先を見出せたりするから、いいんじゃないですか?……って、えらそうなこと言ってますね、俺(笑)。好きか嫌いか、聴く人を振るいにかける音楽としては、非常に『Revolutionary』(革命的)かもしれません(笑)」。
そんなかみじょうが掲げる、ドラマーとしての最終目標は?
「俺は常に高い展望を掲げないと生きていけないタイプでして。高校3年の夏に、それまで1分も勉強しなかったん俺が“大学に行こう!”って思い立って。どこ狙おうかな?って思った時に、目標があったほうが人間は頑張れると思って、とりあえずマサチューセッツ工科大学ぐらい行きたいなって。理系最高峰とか、到達できない程度の目標を掲げると、それに向けてずっとがんばれるかな?とか考えてる類いの人間なので。ヘタすると挫折しますけど(笑)。だから、ドラムに関しても、ドラマーとして行き着くところまで行きたいんですよ。“世界で一番のドラマー”とか“宇宙で一番”とか、口で言うのは容易いですが……たとえば僕が頭の中で描いたドラム・パターンをあなたの頭に転送できる、っていうのが、ドラマーとしての最終形かな?とか(笑)。スティック使わないで音を伝えるとか、楊枝でスティックとまったく同じ音を出せるとか、到達地点っていろいろあると思うんですが(笑)、死ぬまでに行けるところまで行きたい、っていうのが目標です、ドラマーとしては」。
最後に、ドラマーを志す若い世代に対してのメッセージ。
「ぶっちゃけ僕、ドラム……お薦めできないんですよね(笑)。絶対上手くなれないから! 僕ら日本人の、モンゴロイドの体型とか筋肉の質とか、文化とか、住宅環境とか、もういろんな点においてです。基本“やめとけ”って言いたいんです。でも、大好きなものを“嫌いになれ!”って言っても嫌いになれない人もいるじゃないですか。それでもドラマーになるまで死ねない!っていうぐらいの人がドラマーになるべきです」。